橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

日暮里「豊田屋」

classingkenji2008-04-15

今日の二軒目は、すぐ近くの「豊田屋」。前回来たのは、去年の一月だから、一年以上のご無沙汰。テーブル席が中心だが、カウンター席もあるから、一人でも入りやすい。料理は種類が多く、黒板に書かれている本日のおすすめなど、刺身が十数種類あり、さらに焼魚、唐揚げ、酢の物など。アワビのような例外を除けば、ほとんどが六〇〇円台までだが、どれも美味しい。そして、酒が安い。こちらもビール大瓶が四五〇円で、日本酒は徳利で二五〇円。酎ハイは二七〇円とさらに安く、やはり下町風のハイボールだが、「いづみや」のものより色が薄く、味はきわめてすっきりしている。写真のとおり、炭酸が瓶のまま出てくるのがうれしい。酒の値段はほぼ同じなのに、こちらはサラリーマンのグループ客が中心。スーツにネクタイ姿が八割で、「いづみや」とは正反対である。中高年が多いのも、男性がほとんどなのも同じだが、一方はブルーカラーと自営業者、他方はホワイトカラーと、客層がまったく違う。品のいい高齢のご夫婦もいる。こんな対照的な店がすぐ近くにあるところに、山の手と下町の境界に位置する日暮里という町の性格がよく表れていると思う。(2008.4.7)

荒川区東日暮里6-60-11
16:30-24:00 日祝休