橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

上板橋「船底」

classingkenji2008-04-04

最近、必要があって古巣の板橋に何度か足を運んだ。住んでいた頃、上板橋ではほぼ「もつ九」専門だったが、ときどき足を運んだのが、この店。家庭料理風の居酒屋で、串焼き、モツ煮込み、揚げ出し豆腐、まぐろ山かけなどの定番居酒屋料理の他に、イカとキャベツの生姜炒め、豚肉とキャベツのピリ辛味噌炒め、あんかけかた焼きそばなどがあり、軽い食事もできる。長年仲むつまじく連れ添っているのが一目でわかるご夫婦が切り盛りしていて、犬の「もこちゃん」がお出迎えしてくれる。店の前の黒板には「開店33周年 カラオケのない 昭和の時代 料理居酒屋」とあるが、その通りの店。上板橋の南口商店街から左の細い路地を入って右側にある。この近辺、商店街の裏手あたりを散策すると、細い路地が入り組んでいて、びっくりするくらい古い家が残っている。再開発の計画があるというが、はっきり言ってこんな場末に巨大な再開発ビルを建てたところで、地元住民の住み心地がよくなるはずはない。このまま残ってほしい、愛すべき界隈である。定休日は、聞き漏らした。(2008.4.2)

船底
板橋区上板橋1丁目26-12
03-3931-6886