橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

上板橋「もつ九」

classingkenji2008-04-01

前回来たのは昨年の三月一一日だったから、一年ぶりのご無沙汰。この近くに住んでいたとき、行きつけだった居酒屋である。名前の通りもつ焼きを出すが、その他のメニューが多く、普通の居酒屋で出るようなたいていのものはある。しかも、以前より増えている。麺類のメニューがあるが、ママによると近くのそば屋がなくなってしまったので、お客さんから出してくれていわれて、出すようになったとか。こうしてどんどんメニューが増えていく。そしてメニューの短冊が、壁面を埋め尽くしていく。安くてうまいのは、相変わらず。今日いただいたまぐろの刺身(五八〇円)は、小さなメバチマグロをおそらく四分の一尾分ほど切ったもので、柔らかく品のいい味。細切りのネギをたくさん載せ、唐辛子味噌をかけたガツ刺しは、まったく臭みがなく歯触りがいい。客はほぼ一〇〇%地元の常連客で、会社帰りや劇団関係者など大勢で訪れるグループも多い。いつもは賑わっているのだが、今日はたまたま空いていた。もしかすると、三月三一日の今日は、新入社員を迎えるのに備えて、酒を飲まない人が多いのか。東武東上線上板橋の北口からバス通りに出て、向かい側右手の「村さ来」の角を入れば、すぐに灯りが見える。(2008.3.31)

もつ九
板橋区常盤台4丁目34−8
03-3933-3034
17:00-24:00 水休