橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

門前仲町「辰巳新道」

classingkenji2008-03-25

門前仲町の交差点の近く、永代通りから二本北寄りの道から横に入ったところにあるのが、この辰巳新道。小さく古い居酒屋がびっしり並んだ小路で、以前から、戦前からの飲み屋街なのか、それともヤミ市起源なのかと、疑問に思っていた。浜田さん行きつけの店に入り、店の由来を聞いて、ようやく疑問が解けた。もともとは大通りにあった露店だったが、露店を撤去しなければならなくなったときに、材木屋の篤志家が移転先の土地を提供してくれて、この店ができたとのこと。当時の警視庁の資料を見ると、たしかに交差点から三方に露店が立ち並んでいる。ここもヤミ市起源の飲食店街と考えていいだろう。