橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

銀座「酒の穴」

classingkenji2008-03-05

二軒目に寄ったのは、ここ。松屋の正面にある、日本酒の店である。経営は牛肉料理の「らん月」で、一階から上が「らん月」、地下が「酒の穴」になっている。テーブルが七卓ほど、奥には座敷もあるが、やはり保冷庫の真ん前のカウンターに座りたい。ここは、私が地酒にこり出した最初の頃に来た店で、いろいろ飲んだ記憶がある。ただし場所柄もあり、当時は高い店だった。天狗舞菊姫吟醸を飲んで、一人で一万円くらい払ったこともある。ところが、久しぶりに来てみると、当時と値段が変わらない。本醸造が六〇〇円から、純米なら七〇〇円から、吟醸は九〇〇円から。これなら、むしろ安い方の店といえる。料理では、カニの刺身がお勧め。けっこう大きめのズワイガニ半杯分を食べやすく切って出してくれるが、これで一五〇〇円。銀座のど真ん中の表通りだから、このコストパフォーマンスは評価していい。以前は、値段からみてさほどお勧めではなかったが、いまはお勧めの店に加えることができる。酒の品揃えも、最先端とまでは行かないが、かなり充実している。カウンターに備え付けられた酒燗器で、好みに燗ができるのもいいところ。(2008.2.23)

酒の穴
中央区銀座3-5-8 銀座らん月地階
平日 11:30〜23:30
土日 11:30〜22:00 無休