橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

西通りのロックバー

classingkenji2008-01-16

経堂西通りというのは、経堂駅の南口を出てすぐ右に曲がったところから始まり、途中で小田急線のガードを北側へくぐって二手に分かれ、千歳船橋方向へ伸びる通りである。商店・飲食店と住宅が混在した、寂れたとも落ち着いたとも形容できる通りだが、ここには大人好みの店が多い。昨日紹介した「レプロット」、以前紹介した「天ん洋」もこの通りで、他にも中華やインド料理の名店、ニューウェーブ居酒屋の元祖として知られるRや、焼肉チェーンのGTの本店もある。この通りの北側、二手に分かれたところの路地に、かつて「ぼんぞ」というロックバー兼ラーメン屋があった。ちなみにボンゾとは、レッド・ツェッペリンのメンバーでロック史上最高のドラマーとも評される故ジョン・ボーナムの愛称である。ロック好きの住民たちに愛されていたが、昨年、店主が郷里に帰り店は閉店となった。ところがまもなくして、常連客だった若者が、同じ場所に新たにロックバーを開店したのである。初めて入った時には、ツェッペリンの「狂熱のライブ」がスクリーンに映されていた。これはハードディスクに入れていつでも映せるようになっているとのこと。他にも、プライベートものと思われる珍しいビデオがいろいろある。新しい主人はまだ20代の若者だが、古いロックにも詳しいので、中年のロックオヤジでも十分相手をしてくれるはず。店名はないとのことなので、「ロックバー」とだけ紹介しておく。生ビールやスタンダードなウイスキー、スピリッツなどは五〇〇円、プレミアムものは六〇〇−八〇〇円。キャッシュオン・デリバリーのスタイルである。(2008.12.28)