橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

椎名町「かど」

classingkenji2007-11-30

灯台もと暗しというべきか、大学のある江古田からわずか二駅目の椎名町は、いろいろ居酒屋があるとわかっていながら、まだ一度も行ったことのない地だった。そこで今日は大学で仕事を終えた後、ふと思い立って居酒屋探索に出かけることにする。Kという店が第一の目当てだったのだが、あいにく満員で入れない。そこでいろいろ探し回ったあげく、見つけたのがこの店。椎名町は北口に商店街があり、南口のほうはすぐに住宅地になって、あまり店が多くない。その南口の暗くなりかけたあたりの角に立っている店である。まずは、ビールを注文。タンブラーで四五〇円のサッポロ黒ラベル生は、きれいな泡でなかなかレベルが高い。串焼きは、豚もつ焼きがメインで、塩、たれ、ごまだれの三種類がある。肉と肉のあいだに、タマネギの小さな切れ端をはさんでいっしょに串に刺したスタイル。どこかで同じようなものを見たことがあるが、珍しい。どろりと年季が入ったたれが大変美味しく、塩も水準を行っている。これは、なかなかいい店である。ただし飲み物は、生ビールと瓶ビール、日本酒が一種類に焼酎のボトルが三種類、サワーが五種類など、ありきたりのものしかない。せめてホッピーがあれば、ときどき行こうという気になるかもしれないが。しかし西武池袋沿線在住か在勤で、もつ焼きの好きな人にはおすすめできる。客は、私の他にご隠居さん風の六〇代男性が二人いただけ。もつ焼きは店頭でも売っている。(2007.11.27)