橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

目黒「とり薪」

classingkenji2007-11-21

先日、クドウヒロミさんの「モツ煮狂い」という小冊子について情報を募ったところ、ある方から「目黒区立図書館に所蔵されている」との情報をいただいた。というわけで仕事を早々に片付け、目黒へと急ぐ。所蔵しているのは目黒駅から徒歩一〇分くらいの「目黒区民センター図書館」。てっきり、民俗学か都市論のコーナーにあるものとばかり思っていたが、料理店紹介のコーナーだった。一通り読み、主要部分はコピーして図書館を出る。時刻は五時半頃。川沿いの道から目黒通りへ。目黒通りの北側には大きな段差がある。急坂を上って通りに戻ると、もう街はすっかり暗くなり、ネオンの光が目に入る。しばらく歩くと、親しみやすい店構えのやきとり屋に、赤ちょうちんと縄のれん。あらかじめ目をつけておいた「とり薪」である。
中に入ると、左側にカウンターがある。カウンターの入り口側は厨房の外にまで伸び、この部分は向かい合わせの並行カウンターになっている。狭い店ながら、おかげで一人客がたくさん入れる。奥には、テーブル席もある。ホッピーを注文すると、「氷入りにしますか、無しにしますか」と聞かれた。とりあえずは、氷なしを注文。正しい三冷ホッピーを飲みながら、もつ焼きセット(五本・四八〇円)が焼き上がるのを待つ。もつ焼きは備長炭とのことで、一本だと一一〇円が基本で、ハラミ、若鶏などは一三〇円、とりハツ、とりレバは一六〇円など。ササミの明太焼やわさび焼き、牛すじ串焼など変わったのもあり、種類は多い。焼き上がってきたセットは、カシラ、シロ、コブクロ、ハツ、タンが色よく焼き上がり、なかなか美味い。次は黒ホッピーを氷入りでいただき、レバ、シロ、カシラをタレで。タレ焼きには、粉山椒が添えられ、これがなかなか合う。ビールはキリンで、大瓶が五八〇円、大生が六八〇円。サワー類は三二〇円から四八〇円など。客は近所に勤めるサラリーマンと、地元のご隠居風が多いようだ。わざわざ出かけていくほどの店ではないかしれないが、目黒に出かける時に、この店のことは頭にいれておいてよい。(2007.11.14)