橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

経堂純情酒場 太陽堂

classingkenji2007-05-22

経堂駅ホームの南側、線路沿いを西に入ったところに細い道がある。ここには、イタリアンやフレンチ、焼鳥屋やラーメン屋など十数軒の飲食店があるが、そのいちばん西よりの建物の二階にあるのが、この店。強いて分類すれば無国籍居酒屋ということになろうが、基本は和で、日替わりで数種類の刺身、煮込み、酢の物、和え物、そしてメンチカツやレバーフライといった日本的洋食メニューが並ぶ。料理の値段は、四五〇円から六八〇円が中心。薄味で煮込んだ関西風タンシチューといった趣の「ゆで舌」は、とろけるように軟らかく、滋味あふれる佳品。カツオの刺身には、ミョウガ、ワカメ、タマネギがたくさん添えられてきた。酒はサッポロ黒ラベルの生がグラスで四〇〇円、焼酎約三〇種類が四八〇円均一、日本酒も一〇種類ほどあって六〇〇円から八〇〇円、さらに何種類かのカクテル類など。焼酎は一〇〇ミリリットルで均一価格なので、選んで飲めばお得感がある。スタッフは若い男性三人で、よくある無国籍居酒屋風手書き文字のメニューなど、店のスタイルは若い人向け。しかし、和食と焼酎・日本酒が中心で、メニューもいかにも創作料理といった奇をてらったものではないので、大人でも楽しめる。料理の種類は、もっと多くてもいいのではないかと思うが、絞り込むことで価格設定を安くしているのかもしれない。スタッフの人柄なのか、リラックスした雰囲気なのもいい。(2007.5.20)