橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

江古田「四文屋」

classingkenji2007-02-05

以前中野店を紹介した、「四文屋」の江古田店である。メニューも値段も、ほぼ同じ。チレ(脾臓)やナンコツ刺などというマイナーなメニューなると、まったく同じかどうか、確信はないが。この店は、駅の裏の細い通りから、線路側に少し入った、いかにも入りにくそうな場所にある。すぐ前まで行っても、入るかどうか、躊躇する人もいるだろう。一階は、カウンター五席と二人用の小さなテーブルが三つ。急な階段を上れば、二階にも席があるらしい。客は、いかにもこの手の店に慣れた三〇−六〇代の男たちと、近所の学生たちだけ。
男たちはだいたいがジャンパー姿。三〇代、五〇代、六〇代の一人客。三〇代はジーンズをはいている。野球帽をかぶった五〇代の一人は、意外というべきかどうか『正論』を読んでいる。六〇代は野球帽。後から入ってきたのは、五〇代と三〇代の二人組で、同じようなジャンパー姿。そして、スーツにネクタイ姿の六〇代。学生のカップルと、ちょっと怪しげなオールバックの四〇代二人組は、二階に通された。
味は文句なしに四文屋だから、大学の近くで少しだけ焼とんを食べて飲みたいときは重宝する。近所の人、そしてディープなヤミ市的やきとん屋が好きな人なら、行く価値がある。江古田駅北口改札を出て、右側の階段を下り、少し歩いたところに看板がある。(2007.2.5)