橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

赤坂「ホブゴブリン」「すっとこどっこい」

今日は、7時からサントリーホールで読売日響の定期演奏会を聴く。矢代秋雄の協奏曲2曲を中心とするプログラムで、堤剛中村紘子が熱演。いいコンサートだった。その後は赤坂へ。
まず入ったのは、以前から行きたいと思っていたブリティッシュパブのホブゴブリン。階段を下りて店内に入ると、右側にカウンター、カウンターの前は立ち飲み席で、左側にテーブルが並ぶ。さすがに、外人客が多い。数えてみると、外人客二十三人、日本人客十四人で、外人比率はなんと六二%である。グループ数でいうと全十一組で、外人のみが五組、日本人のみが三組、混成が三組。外人客はほとんどがカジュアル系で、スーツにネクタイ姿は四〇代の白人男性二人と、三〇代の日本人サラリーマン三人組だけ。国際的といえば国際的だが、こうも外人比率が高いと、むしろ日本に溶け込むことを拒否する外人のたまり場ではないかという気もしてくる。値段は全体に高めで、ビールはいずれもパイントグラスで、看板のホブゴブリン九五〇円、マーストン、ボディントン、ギネスが一〇〇〇円など。ホップの香りの弱いビターとスタウトばかりで、ちょっと物足りない。料理も一五〇〇円前後が主体で、それもさほど量が多いわけではない。というわけで早々に店を出て、二軒目を探す。
見つけたのが、TBSのそばにある「すっとこどっこい」という店。ここ赤坂店の他、横浜と川崎に三軒あるとのこと。店内はかなり広く、普通のテーブル席の他、壁際にはパーティションで区切られた席もある。壁際の席にはビールサーバーが設置されていて、一〇mlあたり十二円の量り売りというのがユニークだ。ビールはキリンで、中瓶が四五〇円、大ジョッキが六九〇円と、場所を考えると安い。日本酒も菊水、八海山、久保田などを揃え、七〇〇−八〇〇円とリーズナブル。料理も安く、ほぼ二八〇から五八〇円の範囲で、いちばん高い牛肉のユッケが六八〇円。シンタマを使ったというこのユッケは、なかなか美味しかった。客は大別して三種類で、普通のサラリーマンやOLのグループ、外人を含む男性中心のグループ、そしてマスコミ系フリーターと思われる若手のグループ。この場所で、メニューは豊富、値段が安いとあれば、いろいろ使えるだろう。あまり来る場所ではないが、安くあげる飲み会にはうってつけ。今度来ることがあれば、ぜひビールサーバー付きの席に座りたいものだ。(2006.10.20訪問)