橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

銀座周辺

有楽町「ニュートーキョー」のマイルド・スタウト

ニュートーキョーは一九三七年創業で、大規模外食チェーンのさきがけとなった会社である。サッポロ系列のようにみられることがあるが、独立した会社で、大阪ではスーパードライを出していたりする。サッポロビール園や恵比寿ビアステーションは、サッポロと…

正月の銀座ライオン

今日は、今年はじめて都心に出た。まずは明治神宮へ行き、初詣、ではなく、初詣風景を観察。四日だというのに、まだ人出がかなり多い。賽銭を投げ入れる先は、賽銭箱ならぬ巨大なビニールシート。賽銭を投じたあとの出口がないので、終わった人は人波をかき…

旬の銀座・再開発が目白押しの今、銀座に、残しておきたい居酒屋を訪ねる

光文社の雑誌「BRIO」の「旬の銀座」というページで、銀座の居酒屋を紹介しました。記事の主要部分は、ネット上でも公開されています。ご笑覧ください。 http://xbrand.yahoo.co.jp/magazine/brio/1831/1.html BRIO (ブリオ) 2009年 01月号 [雑誌]出版社/メ…

銀座「樽平」

今日の二軒目は、ここ。金春通りから細い路地に入ったところにある老舗居酒屋である。四方をビルに囲まれた一軒家。山形の銘醸・樽平酒造の直営店で、銀座六丁目で開店したのは何と一九三一年。現在の場所に移ったのは一九五二年だが、この建物も戦前のもの…

「三州屋 銀座店」

今日は、大阪出張から帰った、その足で銀座へ。午後五時の待ち合わせまで、少し時間がある。こんなときには、「ライオン銀座七丁目店」あたりで時間をつぶすことが多いのだが、今日は居酒屋気分なので「三州屋」へ。ランチの時間から通しで営業しているので…

銀座「秩父錦」

今日は、高校時代に留学生として在学していたカナダ人の女性と、その夫を迎えてのミニ同窓会。会場は、いろいろ考えて、この「秩父錦」にした。前回も書いたが、この建物は一九二四年に建てられたもので、氷と炭を商う商家の建物だったもの。一九七〇年ごろ…

「天狗」の松茸料理

今日は、妻とその仕事関係の知人である英国人の三人で、「天狗」の東京駅前店へ。この季節になるとメニューに載る、松茸料理を食べさせてやろうという趣向である。松茸料理は二種類で、写真の天ぷら(七一四円)と土瓶蒸し(六〇九円)。天ぷらは野菜の天ぷらと…

「大志満」

今日は、妻がヨーロッパ滞在で不在の間にお世話になった人を招いての接待で、銀座へ。私もお供でご相伴にあずかろうというわけである。向かったのは、加賀料理の「大志満」。この店は、新宿、高輪、横浜などにもあるチェーン店で、水準の高い加賀料理を食べ…

醜くくなる銀座

最近、海外のブランドショップが増えるとともに、銀座の街並みがどんどん醜くなっていく。ディオールのビルは、まるでビルの駐車場だし、プラダの店の前にはコールガールにしか見えない女の巨大な写真が掲げられている。銀座には「銀座フィルター」があると…

銀座「ささもと」

門前仲町の「大坂屋」のところでも紹介したが、明治中期の貧民街に関する優れた(といわれる)ルポルタージュに、松原岩五郎の『最暗黒の東京』(一八九三年)がある。ここに、当時のもつ煮込みについて「煮込──これは労働者の滋養食にして種は屠牛場の臓腑、肝…

「銀座ライオン 銀座七丁目店」

ひと月ぶりに行ってみたら、ビールが値上げされていた。前は小グラス五八〇円、中ジョッキ七九〇円、大ジョッキ九九〇円だったが、それぞれ六三〇円、八四〇円、一〇五〇円に。特に小グラスの値上げ率が八・六%と高い。いつも小グラスばかり飲んでいるから…

「秩父錦」

同じく郷土料理系で古い建物といえば、銀座二丁目の「秩父錦」も忘れることができない。もっとも埼玉県秩父の酒を出す店で、郷土料理といっても蒟蒻と茸の料理くらいだが、建物の古さではこちらの方が上を行く。場所は、銀座二丁目といっても昭和通りを渡っ…

「樽平」

かつてよく通っていた店に、「山形の酒蔵」があった。銀座の松屋通りから細い路地に入ったところの地下にあり、階段を下りて店内に入ると、まるで山形の小さな街の古い居酒屋にワープしたかのような錯覚を覚える、すばらしい居酒屋だった。名前の通り、山形…

銀座「酒の穴」

二軒目に寄ったのは、ここ。松屋の正面にある、日本酒の店である。経営は牛肉料理の「らん月」で、一階から上が「らん月」、地下が「酒の穴」になっている。テーブルが七卓ほど、奥には座敷もあるが、やはり保冷庫の真ん前のカウンターに座りたい。ここは、…

丸の内「赤垣屋」

今日は、外資系労働組合協議会の定期大会で講演するため、熱海へ。一〇〇人ほど集まった組合役員たちを前に、格差拡大と日本の階級社会化、そして労働組合の果たすべき役割について、ひと通りお話をする。うっかりパワーポイントのファイルをVista対応の新し…

有楽町「うた」

ライオンを出て、向かうは有楽町のガード下。「登運とん」に入るつもりだったのだが、満員だったので、すぐ近くの「うた」へ。ここに立ち寄った最大の目的の一つは、京都在住のLiさんに、生ホッピー初体験をさせること。ここの生樽ホッピーは、デフォルト…

「銀座ライオン銀座七丁目店」

今日は、「居酒屋とり橋」のオフ会。集合は午後三時、待ち合わせ場所は、この一階ビアホールである。今回の参加者は、私と女将、大瀧さん、そして京都から来られたLiさんの四人。大瀧さんとLiさん、そして今日は不参加のゆーこさんは、昨日「みますや」…

有楽町のガード下

有楽町のガード下には、「丸三横町」をはじめとして、ヤミ市時代を彷彿とさせる居酒屋がかなり残っている。そのうちの一軒に入ってみた。線路の端から端までを横切る細長い店で、けっこう内装はきれいになっている。メニューも豊富。刺身が各種あり、焼鳥・…

「天狗」東京駅前店

東京駅近辺で食事をと店を探したのだが、月末の金曜の夜だけあって、心引かれるような店は満員。こんな時にハズレがなくて頼りになるのは「天狗」である。ここは、東京駅にいちばん近い「天狗」。地下にフロアが二つあり、合わせるとけっこう広い。秋に入っ…

有楽町「千成」

有楽町のインターナショナルアーケードときいて、分かる人はどれだけいるだろう。ガード下の「登運とん」の近くから狭い通路を線路の真下に入り、新橋方面に向かうガード下である。なぜ「インターナショナル」なのか。確かに新橋側の端っこには、外人向けの…

「天狗」の「ドライハイボール」

コリドー街の天狗にも寄ってみた。この店は、「天狗」チェーンのアンテナショップ的存在で、ときどきチェックすることにしている。個室風のテーブル席などがあり、「天狗」の今後の展開が読める店なのである。新しくメニューに入った酒が「オリジナル天狗酎…

銀座七丁目「ライオン」

銀座へ来たからには、ぜひ立ち寄りたいのが、この「ライオン」である。何度も来ているから、この店については昨年六月一八日の記録あたりを見ていただくことにして、説明は省略したい。今日も満員。私は運良くすぐに座れたが、入り口で待たされている人は多…

銀座二丁目「バニュルス」

catalan bar Vinulsと表記する。つまり、カタルーニャ風バルである。店頭は立ち飲みコーナーで、奥にはカウンターと丸テーブルが五つほど。丸テーブルには椅子が二脚だけで、三人目からは立って飲むことになる。二階はテーブル席のレストランになっているよ…

「三州屋銀座店」

1月に行った三州屋は、並木通りの銀座二丁目だが、こちらは銀座一丁目。どちらも「三州屋銀座店」でまぎらわしい。二丁目の方は「活魚一品料理」、一丁目の方は「大衆割烹」「活魚料理」とある。ただし一丁目店は路地を入るのではなく、西五番街通りに面して…

「のとだらぼち」

今日は、高校の同級生二人(うち一人は、私の妻だが−笑)と「のちだらぼち」で待ち合わせ。ここは、能登の企業家たちが出資しあって作った能登料理居酒屋である。「だらぼち」とは「ばか者」というような意味で、要領が悪く、鈍で、真っ正直な人間のこと。外堀…

有楽町「登運とん」

ここまで来たら、ついでに「登運とん」にも寄ってみよう。「うた」はJRのガードとは道を一本隔てた場所だったが、こちらは正真正銘のガード下。創業は一九五三年とのことだから、ヤミ市直系というわけではなさそうだ。奥の席に通されたが、壁が斜めになっ…

有楽町「うた」

二軒目に行ったのは、有楽町のガード近くにあるモツ焼きの店「うた」。道路にまで客があふれる活気のある店である。場所柄、安いというわけにはいかない。モツ焼きは一七〇円、焼鳥は一九〇円。ただし、一串がけっこう大きいので、損した気分にはならない。…

銀座「樽平」

金春通りから細い路地に入ったところにある一軒家。隠れ家のような店である。酒は、店名の通り山形の樽平酒造の「樽平」「住吉」、そして「雪むかえ」。一階はカウンターと大小のテーブル、二階には座敷がある。私が「住吉」を知ったのは、二〇代の中頃だっ…

「新日の基」

今日は、出版社との打ち合わせで有楽町のガード下へ。初めて行く「新日の基」である。ガード下のかまぼこ型の空間を上下に仕切った半地下と中二階の二つのフロアがあり、かなり広い。インテリアは普通の大衆酒場だが、店の主人は英国人で、店員にも外国人が…

「はかりめ」

三原通りと三原小路に面した銀座五丁目のビルの六階にある、穴子料理の店。店名の「はかりめ」とは、表面に等間隔の白い斑点のある穴子の姿を、棒秤に見立てた呼び名とのこと。店長の近藤さんは、妻の旧知の人物で、ソムリエの資格を持つ。料理はほぼ純和風…