橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

中央線沿線

阿佐ヶ谷「かぶら屋」

中野の次は、阿佐ヶ谷へ。「吟雅」で人と会うことにしていたからだが、その前に北口のほうの飲み屋街に立ち寄る。真新しい看板を見つけて、入ってみたのが、この店。もつ焼きが中心で、珍しいことに静岡風のおでんがある。チェーン店らしいが、他で見た記憶…

中野「牛の四文屋」

やきとり、魚に続いて、「四文屋」の第三の業態が登場らしい。今度は、牛である。 牛だから、安いというわけにはいかない。ランプ、ロース、イチボなどステーキ系は二〇〇円、シビレ、シマチョウ、ギアラなどホルモン系もだいたい二〇〇円だが、上ミノになる…

中野坂上「平田屋」

大学から帰宅するとき、ふだんは大江戸線で新宿まで行き、小田急線に乗り換えるのだが、今日はふと思い立って途中の中野坂上で降りてみる。どこかいい居酒屋でもと思ったのだが、山手通りと青梅街道の交差点はすっかり開発されて、ほとんど新宿高層ビル街の…

中野「ぢどり屋 中野店」

「四文屋」の客に刺激されたわけでもないのだが、新井薬師の次は中野へ。飲み屋街を歩いてみると、新しくできたらしい店が、ちらほら。入ってみようかとも思ったのだが、満員だったり、ちょうど大人数のグループ客が入っていくところだったり。少し歩いた末…

東中野「二代目平八」

火曜日は、朝一限目から始まって三コマの授業をこなし、さらに週の後半の授業の準備と忙しい。疲れるので、どこかで飲んで帰りたくなる。大江戸線で帰路につくが、ふと思い立って東中野で降りてみる。 東中野から新井薬師前方向へ北西に延びる飲食店街を物色…

吉祥寺・ハモニカ横丁のジンジャーハイボール

久しぶりにハモニカ横丁へ行ってみると、「ジンジャーハイボール」と書かれた黄色い提灯がたくさん下がっている。横丁の名物にしようと開発された新商品ということらしい。そこで「てっちゃん」に入り、注文してみる。値段は五〇〇円と、少々高めの設定。派…

吉祥寺「いせや総本店」

吉祥寺の顔ともいうべき存在だった、木造二階建てのいせや総本店が取り壊されて、もう二年半。当時の雰囲気を残しながらビルに建て替えられ、昨年夏には完成したと聞いていたが、これまで機会がなく、今日になって初めて訪れた。建物は、写真の通り。高層ビ…

中野「ウロコ本店」

今日は、退職する先生の送別会で、大学近くの梅きちへ。退職する一人のTさんは、元テレビ局のカメラマンで、退職後は映画館をつくりたいという。九時ごろ終わったのだが、その話の続きを聞きに、二人で二次会。場所は、Tさんの自宅に近い中野で、前から気…

中野「ブリック」

これは超有名店なので、ご存じの方も多いはず。創業は、一九六四年だから東京オリンピックの年。一世を風靡したトリス・バーの代表格だった。L字型のカウンターといくつかのテーブル。オーセンティックな雰囲気でありながら、安く飲める店である。トリスを…

中野「魚の四文屋」

今日は大学で資料集めをしてから、久しぶりに中野へ。久しぶりに新潟料理の「雪椿」へ行こうと思っていたのだが、見つからない。どうやら、閉店したようだ。周囲がアニメ系の店に取り囲まれているかっこうだから、しかたがないのかもしれないが、さびしいこ…

阿佐ヶ谷「吟雅」

二軒目は、選りすぐりの純米酒を絶妙の燗で飲ませてくれる「吟雅」。ワインもあるが、今日は当然、久しぶりに日本酒を楽しむこととし、秋鹿・特別純米や、諏訪泉・純米吟醸などをいただく。ご主人はソムリエと唎酒師の資格を持つ酒のプロだが、料理にも研究…

阿佐ヶ谷「四文屋」

今日は、久しぶりに大学へ行き、たまった郵便物や配布物の整理をし、手紙やメールをいくつか書いた後、バスと中央線を乗り継いで阿佐ヶ谷へ。まず入ったのは、この店。チェーン店にもかかわらず、個人営業の老舗のような仕上がりのモツ焼とモツ煮込みを食べ…

阿佐ヶ谷「まにわ」

今日は、テレビ東京のHさん、ライター・紀行家のYさんと待ち合わせ。Hさんのお勧めのこの店は、阿佐ヶ谷の北口を出て飲食店街を抜け、少し歩いた住宅地にある。店主の間庭順子さんは元OLで、勤めを辞めた後いくつかの店で修行して、この店を開いたとのこと。…

中野「第二力酒蔵」

広く知られた魚料理の名店。広い壁面は、ありとあらゆる魚料理のメニューで埋め尽くされていて、値段も幅広い。まぐろ大とろ・中とろは「二九五〇円より」とあるが、おそらく一流寿司屋クラスのものを使っているのだろう。同じくまぐろの中おちは一四〇〇円…

阿佐ヶ谷「吟雅」

今日は、妻とそのワイン仲間たちと一緒に、阿佐ヶ谷の「吟雅」へ。前回も書いたが、ここはソムリエと唎酒師の資格を持つ店主が最近開いた店。純米酒がメインだが、ワインも置き、料理も和風・洋風とりまぜて酒に合うものを出してくれる。今日は、最初に「ジ…

西荻窪「戎」

前回ここに来たのは昨年の十一月だった。西荻窪駅南口を出て右側へ進めば、すぐに看板がみえてくる。恵比寿、吉祥寺、川崎、横浜などで一四店を展開するチェーン店だが、その発祥の地がここ。前回も書いたが、このあたりは郊外としてはかなり規模の大きいヤ…

阿佐ヶ谷「吟雅」

知人の近藤さんが、これまで勤めていたあなご料理店「はかりめ」を辞め、独立して開いたのが、この店。阿佐ヶ谷一番街の一番奥の方、飲食店の灯りが切れかけてきたあたりの、左側にある。カウンター七席だけの小さな店だが、カウンターは広く、椅子も大きめ…

阿佐ヶ谷「鳥正」

今日は、知人が新しく開いた店へ行くため、阿佐ヶ谷へ。といっても、料理は軽いつまみ程度になりそうなので、その前に一軒行っておこう。場所は、阿佐ヶ谷駅の南口を出て、左側へ信号を渡ったところから始まる細い通り。飲食店が連なる阿佐ヶ谷一番街である…

東中野「路地裏酒場 ちょいと一杯」

これも、東中野ムーンロードの店。串焼き中心の居酒屋である。狭い店で、テーブル二卓とカウンター四席だけ。これを、若者が一人で切り盛りしている。まずホッピーセット(四五〇円)と煮込み(三八〇円)を注文。ホッピーに氷を入れるかと聞くところは、正しい…

東中野「みや」

東中野駅の東口を出たところに、ムーンロードと名付けられた飲食店街がある。ゆるやかに右に曲がっていく細い通りには、色とりどりの灯りや提灯が並び、居酒屋好きなら心惹かれずにはいられないだろう。その中ほどにあるのが、この店。大衆割烹と白抜きに染…

阿佐ヶ谷「川名」

以前からぜひ行ってみたかった店である。なにしろ、居酒屋ブログ界のエース・「居酒屋礼賛」の浜田さんがいちばん足繁く通う店である。いい店に違いない。阿佐ヶ谷駅の北口を出て、歩くこと約六分。目指す店はすぐに見つかった。ただし、最初は満員で入れず…

西荻窪「戎」

「晩小屋」の次は、「戎」へ。有名な店だが、私は今回が初めて。駅の南口を出て右方向へ少し歩いた道の両側に、「戎」が四軒ある。私が入ったのは、道の向かって左側の一軒。屋台風の店内は狭く、平行に向かい合った木のカウンターが二本。濃く変色した壁、…

西荻窪「晩小屋」

今日は夕方から、資料を探しに中央線沿線のミニコミ専門書店をいくつか回る。目当ての資料は、残念ながら見つからなかったので、予定通り居酒屋探索に切り替え(笑)。最後に立ち寄ったのが西荻窪の「信愛書店」だったので、その周囲を探索していると、蠱惑的…

高円寺「素人の乱・セピア」

雨宮処凛の本を読んだ人なら、高円寺でフリーターやニートの若者たちが始めた、「素人の乱」というリサイクルショップや古着屋などの商店群のことをご存じだろう。高円寺駅の北口を出て、ガード北側の飲み屋街に入り、そのまままっすぐ行くと、だんだん店の…

高円寺「四文屋・大一市場店」

今日は出版社の編集者とともに、高円寺へ。今回は、とくに具体的に企画があるわけではなく、ほとんど出版情勢やら新書の現状についての雑談だけ。行く店は決めていなかったのだが、北口をぶらぶら歩きながら店を物色していると、「四文屋」の看板が目に入る…

吉祥寺「美舟」

「てっちゃん」で飲んでいると、正面右側に「やきとり」と書かれた古い赤ちょうちんが見える。これは、行かないわけにいくまい。というわけで、すりガラスの入った引き戸を開ける。中は、何とか八人くらいは入れるかというコの字型カウンター。年季の入った…

吉祥寺「てっちゃん」

大衆的な一大商業地として発展した上野・アメ横を別とすれば、吉祥寺のハモニカ横丁は、ヤミ市の雰囲気を残しながら多くの人々を引きつけ続けているという点で、数あるヤミ市起源の商店街の中でも特筆すべき存在といえる。飲食店はさほど多くないのだが、そ…

吉祥寺「いせや 井の頭公園店」

九月八日と九日は吉祥寺のお祭り。ふらふらと出かけてみた。吉祥寺は、発展著しい。いまや、副都心といっても過言ではない。祭りも、活気がある。大勢の若者たちが、半被を着て御輿を担いでいる。若者を引きつける力のある街である。都心と違って、地元に若…

荻窪「金魚」

高円寺の次は、荻窪へ。ここからなら、タクシーで環八に出て簡単に帰れる。荻窪の北口は、だいぶ変わったとはいえ、ヤミ市の雰囲気を残す一角が残る場所。まずは、有名な屋台の焼鳥屋「鳥もと」へ。焼鳥は、すでに焼いてあるものを焼き直すスタイル。ビール…

高円寺「かみや」

一軒目でモツ焼が食べられなかったので、途中で目をつけておいた「かみや」に入る。ビルの一階ながら、壁面に山型の屋根を取り付け、古びた暖簾と提灯が下がり、まるで一軒家のような雰囲気。看板には「行きに寄ろうか帰りによろか なれば行きにも帰りにも」…