橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

松江「佐香や」

そして三軒目は、大橋川の当たりを歩いていて見つけたこの店。店先に島根県産酒の名前を書いた木札がずらりと並んでいるのを見れば、入ってみないわけにはいかない。 いただいた酒は、十旭日の純米吟醸生原酒・山田錦五五木槽しぼり、豊の秋特別純米生原酒、…

松江「大衆割烹なわのれん」

二軒目は、この店。普通の店構え、普通の店内だが、この店は当たりだった。郷土料理系居酒屋だが、メニューの種類が多く、しかも安い。しじみの酒蒸し(六〇〇円)は、濃厚ながらすっきりした味。アゴの子の煮付け(五〇〇円)は、プチプチとした歯応えが楽しめ…

松江「やまいち」

仕事で松江へ。夜は当然、飲みに行くわけで、とりあえず向ったのはこの店。大橋川の川縁にあるこの店は、太田和彦の「居酒屋味酒覧」にものってるから、名前だけは知っている人もいるだろう。 カウンター一〇席ほどと小上がり三卓と、こぢんまりとした店内は…

稚鮎のスモーク

最近、きわめて簡単な方法で燻製を造るようになった。 古びてこびりつきが気になるようになったフライパンと、これにぴったり合うガラスの蓋、そしてフライパンより少し小さく、底から二センチくらいのところでぴったり止まるような丸網を用意する。燻製にす…

『嗜み』No.11

最新号が出ました。私の「全国居酒屋ほろ酔い考現学」は、都内・岩手宮城福島郷土料理篇。都内にある東北居酒屋を紹介します。取り上げたのは、「岩手屋」「南部家」「千真野」「間」「身知らず」「樽一」「さばの湯」の七軒。書店ではあまり見かけない雑誌…

田端「初恋屋」

今日は、必要があって文京区内をあちこち歩きまわる。たどり着いたのは田端で、田端文士村記念館が終点。田端の駅前には、深い切り通しの道路があって、田端文士村のあった丘は、無残にも南北に分断されている。とくに北側が小さく取り残された感で、ここに…

谷中「喜月」

ちょっと必要があり、谷中近辺を散策。谷中ぎんざはすっかり観光地化して、俗悪な臭いに支配されつつあるが、これと交差するよみせ通りの方は、古い商店街の雰囲気が残る。途中で見つけたのが、素朴な店構えのこの店。玄関に貼り紙があり、「当店の営業は水…

浜田信郎(監修)『さかなマニア』

居酒屋ブログ界のエース、浜田さんの新著。「監修」とあるように、すべてを浜田さんがまとめた訳ではなく、四人のライターが取材した本だが、文体をうまく真似て書かれているので、あたかも浜田さんの著書のようなテイストを感じさせる。 掲載されているのは…

池内紀『今夜もひとり居酒屋』

ドイツ文学者にして街歩きの達人・池内紀センセイの新著。『中央公論』に連載されていったエッセイの単行本化だが、連載時のタイトルは「居酒屋の哲学」だったらしい。哲学らしいところはたしかにあって、そのメインは居酒屋、または居酒屋の個々のアイテム…

ヤミ市研究会 in ハモニカ横丁

今日は、東大の建築史研究室でヤミ市研究会。終わった後は恒例の「現地調査」で、今回は吉祥寺のハモニカ横丁へ。予約しておいたのは「ハモニカキッチン」で、無国籍料理の他、すぐ横の「てっちゃん」のヤキトリを注文することもできる。しかし案の定、レバ…

沼袋「たつや」前の猫

仕事のあと、沼袋の「たつや」へ。ここへ来るときはたいてい、タクシーを最低料金だけ利用する。案の定、刺身はない。レバテキというのがあるので、これは中は生なのかと聞くと、「保健所のご指導の下、中はツルツルです」という。表面には焦げ目が付いてい…

レバ刺しを救え!

とんでもないニュースが入ってきた。 食中毒:生食用レバーの規制是非検討 厚労省審議会 焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件を受け、生食用牛肉の罰則付き衛生基準を検討する厚生労働省の審議会の初会合が28日開かれ、肉だけでなく、内臓…