橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

浜田信郎『東京飲み歩き手帳』

ご存じ、居酒屋ブログ界のエース、浜田さんの単著。人気の居酒屋へ行こうとして、満員で入れなかったときなど、「その酒場の近くにある他の酒場をサッと調べることができる手帳があったら」という願いを、自分自身で実現しようとまとめた本とのこと。なるほ…

甲府「大黒ホルモン」

甲府を初めて訪れたのは、おそらく一七−八年前のことである。その後、山梨県の某団体から研究協力者を頼まれたことから、年に二回程度訪れるようになった。仕事は三年ほどで終わったが、煮貝と馬刺し、ほうとうのおいしさ、大衆酒場でワインを飲むという独特…

甲府「奈良田」

甲府の郊外に、同名の大きな老舗郷土料理店があるが、こちらはその親戚のママが一人で切り盛りする、カウンターだけの小さな店。馬刺しや馬煮込み、山菜などはいつでもあるが、季節によってキノコや猪など、珍しい地元の食材を使った料理を出してくれる。こ…

甲府「太助」

一泊二日で、山梨へ。宿泊は甲府で、ホテルに荷物を置いて早々に駅前へ。山梨の人は郷土料理に冷淡なところがあり、居酒屋も選んで入らないと、郷土料理がまったく置いてないなどということが珍しくない。とくに仕事関係で地元の人と飲みに行くと、魚介中心…

神楽坂「フレンチ・ダイニング」

知人のフランス人と日本人の夫婦が、秘蔵のワインを飲ませてくれるというので向かったのが、この店。まるで米国の場末のフレンチのような店名だが、フランス人の経営するれっきとしたフレンチ。ワインの持ち込み可ということで、今日の店に選んだとのこと。 …

神楽坂ワヰン酒場

知人夫婦と食事の約束があって神楽坂へ行ったのだが、少し時間に余裕がある。坂とその周辺をしばらく物色し、見つけて入ったのがこの店。外壁をレンガで飾り、イミテーションながらよくできたブドウの蔓を這わせている。 売り物は、ワインのアウトレット品。…

「魚匠 銀平」

今日は臨時収入が入ったので、ちょっと高めの店にでも、ということで、ビールのあとは銀座の裏通りで店を物色する。初めはイタリアンかスパニッシュでも、と探していたのだが、良さそうな店はどこも満員。店員には「今度は予約していらっしゃってください」…

「泡立つ青春」(マキノ正博監督・一九三四年)

創建当時の「ライオン銀座七丁目店」ビヤホールの姿を見ることのできる映画が、これである。大日本麦酒株式会社のPR映画だが、主に戦前期に活躍し、生涯に二六〇本以上もの作品を作り上げた名監督・マキノ正博(雅弘)がメガホンをとっている。 映画はまず、…

「銀座ライオン 銀座七丁目店」の稚鮎

このブログは、基本的に時系列で書いている。記録を確認したり、必要な場合には資料にあたったりしてから順番に書いていくので、記事は常に二〜三週間遅れになっている。しかし、これでは特別なイベントや季節メニューには間に合わない。今日は順序を変え、…

朝日新聞「ゼロ年代の50冊」

なぜか、拙著『「格差」の戦後史』が選ばれました。悪い本ではないと思いますが、一〇年間のベスト50冊に入るようなものかどうか。まあ、ここは率直に喜んでおくことにしましょう。ちなみに一位は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』だそうです…

秋葉原「赤津加」

三軒目は、都営浅草線と総武線を乗り継いで、秋葉原へ。アニメとゲームの街の賑わいは相変わらずだが、この店もあいかわらず。有名店になって、もう何年になるか、開店と同時に入ったのだが、すぐに続々と客が入ってくる。中年の一人客が多く、カウンターか…

浅草「鈴芳」

今日は「居酒屋とり橋」の常連客、Liさんが東京に来られているというので、雷門前で待ち合わせ。京都の人なので、東京にしかない変わったものを飲んでいただこうと、この店にお連れする。この店は、都心の店には珍しく、生ホッピーと下町ハイボールをおい…

浜田山「かのう」

昨年の3月、この店をたまたま見つけて紹介したが、その数ヶ月後、店主の息子さんという方からメールがあった。店を紹介していただいてありがとうございます、両親に見せたところ、「長い間やってると、誉められることもあるんだねぇ」と喜んでいました、残念…

西川治『世界ぐるっとほろ酔い紀行』

著者はグルメで知られる写真家で、料理に関する著作が多いが、本書は世界中で酒を飲み歩いた記録をまとめたもの。酒については、私もかなりの数の本を読んできたし、実際に飲んでもきたので、既知のことも多いのだが、やはり実際に世界中へ足を運んだ人は違…

サッポロホールディングス株主総会

昨年に引き続いて出席。今年はスティール・パートナーズが派手にプロキシ・ファイトを仕掛けたので、けっこう注目された。私のところにも、郵便物が二回、さらに電話までかかってきた。とはいえ、安定株主と国内金融機関の支持をあらかた押さえたから、結論…