橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

橋本健二の読書&音盤日記

この「居酒屋考現学」とは別に、もうひとつブログを持っています。これまでは楽天ブログだったのですが、あまりに広告が多いのに辟易して、Hatenaに移行させました。関心のある方は、お立ち寄りください。 橋本健二の読書&音盤日記

鈴木琢磨『今夜も赤ちょうちん』

毎日新聞の名物記者、鈴木琢磨の名コラム「今夜も赤ちょうちん」が、ついに単行本になった。版元は、なぜか毎日新聞社ではなく、あまり聞いたことのない出版社。毎日新聞夕刊での連載は約一五〇回だったが、精選して七八本、これに「呑んべえ列伝」と題して…

「思い出横丁」の風景

今日は、静岡大学時代の教え子と、「思い出横丁」で待ち合わせ。最近、小さなビジネスを立ち上げたらしく、協力してくれというのだが、ちょっと分野が違う。適当に、話を聞いておく。 変わった看板が増えた。「トロ函」の上を見ると、まず巨大なキンミヤ焼酎…

江古田「あぶさん」

この店については、二年前に書いたことがある。その後も何回か来ていたのだが、今日久しぶりに寄ってみると、「この店、進化したな」と思わせるものがあって、もう一度取り上げてみたくなった。 メニューが増えている。「血管」というのがあって、串は九〇円…

江古田「乃がた」

ここは、江古田でも老舗に属する居酒屋。何年かぶりで、来てみた。ご覧の通り、どこにでもありそうな店構えである。同名の店が西武新宿線の野方にあるが、関係はあるのかないのか。 中に入っても、ごく普通の居酒屋だ。カウンターが数席と、数卓のテーブル席…

阿佐ヶ谷「かぶら屋」

中野の次は、阿佐ヶ谷へ。「吟雅」で人と会うことにしていたからだが、その前に北口のほうの飲み屋街に立ち寄る。真新しい看板を見つけて、入ってみたのが、この店。もつ焼きが中心で、珍しいことに静岡風のおでんがある。チェーン店らしいが、他で見た記憶…

中野「牛の四文屋」

やきとり、魚に続いて、「四文屋」の第三の業態が登場らしい。今度は、牛である。 牛だから、安いというわけにはいかない。ランプ、ロース、イチボなどステーキ系は二〇〇円、シビレ、シマチョウ、ギアラなどホルモン系もだいたい二〇〇円だが、上ミノになる…

「ふくろ 美久仁小路店」

どうも、不完全燃焼だ。この界隈に来たからには、やはり横丁の居酒屋に入らなければ。というわけで、二軒目はここへ。この店の店員の女性については、以前も書いたことがあるが、素晴らしく有能で、たった一人で何十人もの注文をこなしていく。さっさと注文…

「人世横丁ビル」?

人世横丁のあった場所の近くに、新しいビルができた。ここに、人世横丁にかつてあった店のうち何軒かが入居している。といってもほんの三−四軒で、ビルに移転したというほどの規模ではない。変に小ぎれいになった店もあり、当時を偲ばせるものはない。そのな…

人世横丁・その後

昨年秋に消滅した人世横丁だが、その跡地はどうなっているのか。 なんと、駐車場である。雑居ビルか何かで高度利用されているなら、まだあきらめもついたのだが。こんな使われ方をするくらいなら、どうにか残すことはできなかったのか。ゴールデン街のように…

アメーラトマト

近所のスーパーで、少し前から売っている。フルーツトマトの一種で、静岡産。静岡に住んだことのある人なら、この名前を見て思わず吹き出したかもしれない。静岡では、「〜だよ」「〜でしょ」というのを「〜らー」という。つまり「甘めぇらー」トマトという…

中野坂上「平田屋」

大学から帰宅するとき、ふだんは大江戸線で新宿まで行き、小田急線に乗り換えるのだが、今日はふと思い立って途中の中野坂上で降りてみる。どこかいい居酒屋でもと思ったのだが、山手通りと青梅街道の交差点はすっかり開発されて、ほとんど新宿高層ビル街の…

食楽責任編集『厳選!旨い居酒屋250店』

雑誌『食楽』の別冊で、創刊からの4年間に取材した居酒屋を厳選して集めたもの。正統派の居酒屋料理を出す風格ある居酒屋を中心に、郷土料理系、海鮮料理系、銘酒系などを加えたラインナップで、全体にグレードはやや高め。その意味では『古典酒場』などとは…

横浜「揚州茶楼」

今日は、なぜか、横浜で「地球のハラペコを救え ウォーク・ザ・ワールド」なるイベントに参加。この種のものに関しては、経費をかけてイベントなんかやるより寄付した方がいいんじゃないの、と考えてしまう方なのだが、横浜市街を歩いて一周するなんて、なか…

江古田「草加部二郎」

江古田には北口と南口がある。飲食店が多いのは南口の方だ。北口はどちらかといえば商店街で、商店や住宅の間に飲食店が点在している。これに対して南口は、洋食屋やラーメン屋、居酒屋などが駅の周囲に密集しているが、少し離れると急にまばらになる。その…

トビウオのなめろう

なめろうとは、ご存じの通り房総の郷土料理で、魚の身を叩いて味噌と生姜で味をつけ、さらに大葉、ネギ、ミョウガなどとまぜたもの。魚は青魚が基本だが、店によっては残り物をいろいろ加えることもあり、私がときどき行く店では、イカを加えて粘りけを出し…

新潟「カーブ・ドッチ」

今日の宿泊は、少し足を伸ばして新潟市の西の外れ、かつては巻町といった地域にあるワイナリー、「カーブ・ドッチ」に併設された温泉・宿泊施設「ヴィネスパ」へ。 このワイナリー、変わった名前だが、綴りはCAVE D'OCCI。落希一郎という人が創業社長である…

新潟「早福酒食品店」

二泊三日の予定で、新潟へ。新潟市内の酒店では、東京ではプレミアつきの高値で売られているような地酒が普通に手に入ることが多いが、この店はとくに品揃えがいい。種類を多く揃えて圧倒するというのではなく、厳選されている。写真のように、店先にはこの…

中野「ぢどり屋 中野店」

「四文屋」の客に刺激されたわけでもないのだが、新井薬師の次は中野へ。飲み屋街を歩いてみると、新しくできたらしい店が、ちらほら。入ってみようかとも思ったのだが、満員だったり、ちょうど大人数のグループ客が入っていくところだったり。少し歩いた末…

新井薬師「四文屋」

あちこちの店を訪問している、ニューウエイブやきとりチェーンの四文屋だが、発祥の地は新井薬師らしい。一度行ってみたいと思っていたのだが、ようやく空き時間に行くことができた。 何の変哲もない店構えで、店内の雰囲気も、他の四文屋と同じ。メニューも…

新橋ヤミ市と「女王蜂と大学の竜」(石井輝男監督・一九六〇年)

明治初期、新橋は文明開化の窓口として栄えた。東京駅ができてからは、やや目立たなくなるが、それでも銀座の延長上の盛り場として、多くの人々を集めた。 戦争が、新橋を大きく変えた。銀座はコンクリート造りの耐火建築が多く、松屋や松坂屋、和光など主だ…