橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

自由が丘「金田」

今日は、出版社の編集者と打ち合わせと称して飲むことに。スタートはここ、自由が丘の名店「金田」である。この店、いつもカウンターの上に、毎日変わるメニューが二つ折りにしておかれている。このメニューは、じっくり鑑賞するに値する。季節の魚や野菜の…

渋谷「ミラフローレス」

珍しいペルー料理の店。ペルー大使館肝いりで作られた正統派の店らしく、けっこうあちこちで紹介されている。土曜日だったが、若者たちの団体で満員盛況だった。味は、いい。アンティクーチョ(牛ハツの串焼き)はスパイシーかつジューシーだし、パパラ・ワン…

堀切菖蒲園「小島屋」

京成線の堀切菖蒲園駅から歩いて2分ほど。「元祖ハイボール」を名乗る老舗の居酒屋である。創業は終戦直後で、凹型カウンターの現在の店になってからも、すでに40年が経つとのこと。ハイボールの元祖については諸説があるが、もっとも古い店の一つであること…

四つ木「ゑびす」

立石の隣の駅が、四つ木。荒川のすぐそばで、かつてセルロイド工場が集中する工場街だった場所。駅は何の変哲もない高架式だが、階段を下りて左手に出ると、昭和の雰囲気の古い商店街が始まる。五分ほど歩くと、商店街は右側にゆるくカーブしていくが、その…

立石「江戸っ子」

今日は、京成線沿線へ。「古典酒場」の立石ツアー以来の訪問である。向かったのは、「江戸っ子」。この店は、「宇ち多」とちがって照明が明るく、店の全面がガラス張りの開放的な雰囲気で初めてでも入りやすい。着いたときはもう満員に近かったが、何とかカ…

「古典酒場・沿線酒場〈京成&世田谷線〉編」

第四弾が出ました。今回も、巻末の「居酒屋通ブログ五人衆よもやま話」で登場しています。テーマは「山の手酒場・下町酒場」。その他、五六頁にはホッピー酒場についても書いています。ご笑覧を。リンクは上がAmazon、下が楽天です。 さっそくで恐縮ですが、…

浅草「神谷バー」

ときどき、どうしても行きたくなるのが、この店。現在の建物は一九二一年に建てられたもので、関東大震災と東京大空襲で焼けたものの、そのたびに修復して使われて続けている。一階が「神谷バー」、二階が「レストランカミヤ」、三階が「割烹神谷」になって…

鐘ヶ淵「大吉」

東武線の鐘ヶ淵駅は、北千住から南へ三駅目のところ。かつては鐘淵紡績、後のカネボウの大工場があり、このあたりではもっとも栄えた場所だった。隅田川べりの工場の跡地には、今は団地が建っている。この駅と、南の京成線八広駅の間は、下町酒場好きの間で…

「千住の永見」

北千住駅の西口を出て左側、線路とほぼ並行して、両側に小さな店が建ち並ぶ飲食店街がある。名前をときわ通りといい、大衆酒場の宝庫のようなところだ。この入り口に位置するのが「千住の永見」。千社札の字体でくっきり書かれた看板に、粋でいなせな店主の…

「大はし」

言わずと知れた名店。なぜか最近縁がなく、この一年くらいの間に満員で入れなかったことが二回あった。なので、けっこう久しぶり。しかし今日は、ビール一本と煮込み一皿だけで店を出た。なぜかというと、居心地がよろしくなかったから。この店、長身胴長で…

日暮里「豊田屋」

今日の二軒目は、すぐ近くの「豊田屋」。前回来たのは、去年の一月だから、一年以上のご無沙汰。テーブル席が中心だが、カウンター席もあるから、一人でも入りやすい。料理は種類が多く、黒板に書かれている本日のおすすめなど、刺身が十数種類あり、さらに…

日暮里「いづみや」

JR日暮里駅の北口を出ると、下御隠殿橋という跨線橋がある。下を山手線、京浜東北線、東北本線、常磐線、東北・上越新幹線、京成本線が通り、通過する列車は一日二五〇〇本にもなるという日本有数の跨線橋である。この橋から、線路の両側を眺めてみよう。…

「黒ぶたや」

経堂駅南側の農大通りに、最近できた店。黒豚料理がメインというので、行ってみた。写真は豚ヒレたたき(八〇〇円)で、外側だけ焼き、中は完全に生という一品。豚は寄生虫がいるので火を通さないといけない……というのは昔の話らしいが、生のものを出す店は少…

板橋区役所前「亀屋」

都営三田線の駅のすぐそばに、旧中山道と王子新道が直交する交差点がある。このあたりは、旧中山道沿いの中宿商店街の中心部にあたるが、そのそばに、くすんだ光を放つ大衆酒場がある。紺地に白く「大衆酒場」の文字。「大衆酒場 亀屋」といえば、八広に同名…

志村坂上「飯綱」

これは、都営地下鉄三田線の志村坂上駅近くにある知られざる名店である。志村坂上は、かつて神田橋を起点とする都電一八系統の終着駅があった場所。ここから中山道沿いを都心方向に少し戻った左側、マンションの地下にある。入り口は小さく狭く、しかも階段…

板橋「北海」

板橋区の南端、北区・豊島区との区界あたりには、都営三田線の新板橋、JR埼京線の板橋、東武東上線の下板橋という三つの駅がある(ただし、下板橋駅の所在地は豊島区)。一九六〇年代まで城北・埼玉方面へ向かうバスのターミナル駅でもあった板橋駅前には、飲…

上板橋「船底」

最近、必要があって古巣の板橋に何度か足を運んだ。住んでいた頃、上板橋ではほぼ「もつ九」専門だったが、ときどき足を運んだのが、この店。家庭料理風の居酒屋で、串焼き、モツ煮込み、揚げ出し豆腐、まぐろ山かけなどの定番居酒屋料理の他に、イカとキャ…

東武練馬「棟梁」

上質の魚料理を出す居酒屋として、一部ではけっこう有名な店だが、私は今回が初めて。六時少し前に入ったのだが、すでにカウンター席は予約でほぼ満席。端の一席だけ空いていたのに、座らせてもらった。テーブル席も、すでに客がいるか予約されているかとい…

上板橋「もつ九」

前回来たのは昨年の三月一一日だったから、一年ぶりのご無沙汰。この近くに住んでいたとき、行きつけだった居酒屋である。名前の通りもつ焼きを出すが、その他のメニューが多く、普通の居酒屋で出るようなたいていのものはある。しかも、以前より増えている…