橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

阿佐ヶ谷「吟雅」

今日は、妻とそのワイン仲間たちと一緒に、阿佐ヶ谷の「吟雅」へ。前回も書いたが、ここはソムリエと唎酒師の資格を持つ店主が最近開いた店。純米酒がメインだが、ワインも置き、料理も和風・洋風とりまぜて酒に合うものを出してくれる。今日は、最初に「ジ…

麻布十番「あべちゃん」

麻布十番は、六本木ヒルズから坂を下ったところにある商店街で、元の町人町。いわば、山の手の中の下町である。こういう場所を、歴史的に「下町」と呼ぶことがあったかどうかというのが、私の前からの疑問で、いつか調べなければと思っている。ご存じの方が…

神保町「やきとり屋」

今日は、政策分析ネットワークという団体が主催する「政策メッセ」の、「格差と地域格差」というセッションに出席するため、駿河台の明治大学へ。パネリストは私の他、新潟大学の田村秀さん、中央大学(四月一日付で東京学芸大学から異動)の山田昌弘さん、朝…

二〇万アクセス御礼

一昨日、二〇万アクセスを突破しました。皆さん、ありがとうございます。かなり記事が増えてきましたので、あまり行っていない地域、居酒屋のタイプなど意識しながら、また肝臓とも相談しながら、更新していきたいと思います。

門前仲町「辰巳新道」

門前仲町の交差点の近く、永代通りから二本北寄りの道から横に入ったところにあるのが、この辰巳新道。小さく古い居酒屋がびっしり並んだ小路で、以前から、戦前からの飲み屋街なのか、それともヤミ市起源なのかと、疑問に思っていた。浜田さん行きつけの店…

門前仲町「大坂屋」

今日は、「古典酒場」の座談会で、まず早稲田の「加賀屋」へ。今日のテーマは「下町酒場・山の手酒場」で、東京の東西・台地の上と下での居酒屋の違いなどにふれながら、結局は雑談。なんとか倉嶋編集長がまとめてくれるだろう(笑)。二次会は、ちょうど東西…

東武練馬「春日」

東松山は、やはり遠い。ここで何軒もはしごして、酔っぱらってしまうと先が不安なので、ともかく都内に帰ることにする。急行の池袋行きに乗ると、都内の停車駅は成増だけ。成増が近づくと、なんとなく郷愁が起こってくる。思わず降りて、各駅停車に乗り換え…

東松山「桂馬」

まず入ったのは、ネットで老舗として紹介されていたWという店。中は大きめのコの字型カウンターで、十数人座れる広さ。正面あたりに座って、メニューをみると……??。東松山のやきとり屋には組合統一価格があって、一本一〇〇円だと聞いていたのに、この店は…

東松山の「やきとり」

豚のモツなどを焼いたものを「やきとり」と呼ぶのはなぜかという問題については、以前書いたことがある。その発祥地というわけではないけれど、このタイプの「やきとり」を語るときに外せないのは、東松山の「やきとり」だろう。基本的には豚のカシラと長ネ…

西荻窪「戎」

前回ここに来たのは昨年の十一月だった。西荻窪駅南口を出て右側へ進めば、すぐに看板がみえてくる。恵比寿、吉祥寺、川崎、横浜などで一四店を展開するチェーン店だが、その発祥の地がここ。前回も書いたが、このあたりは郊外としてはかなり規模の大きいヤ…

さらばニホンシトロン

大衆酒場好きのあいだで熱く支持されていたニホンシトロンが廃業した。炭酸のガス圧が強く、栓を抜いたとたんに、大粒の泡が出始めるほど。焼酎の量が多い濃いめの酎ハイでも、しっかりした炭酸を感じることのできる、優れた炭酸水だった。豪徳寺の祭邑で、…

ニュー新橋ビル

このビルは、一九七〇年頃まで残っていた新橋駅西口のヤミ市起源の大飲食街を再開発して、一九七一年に完成したもの。このため、一九六六年に完成した東口の新橋駅前ビルと同様、内部にヤミ市の香りを色濃く残している。地下の飲食店は、通路が縦横斜めに通…

明大前「宮古 2号店」

今日は東京芸術劇場で、ピアソラのタンゴ・オペリータ「若い民衆」の日本初演を聴き、興奮冷めやらぬまま、そのまま京王線で明大前へ。どこへ行こうかと迷ったあげく、前から気になっていたこの店へ。明大の学生を主な相手とする格安沖縄料理店である。サッ…

さらば人世横丁

人世横丁が再開発で消えることになった。東京に数あるヤミ市起源の横丁の中でも、三角形をした通りの形から来る独特の回遊性と、何ともいえない風情があって、いちばん好きな場所の一つだった。残念である。すでに閉店した店もあり、五月頃までにはすべて退…

「秩父錦」

同じく郷土料理系で古い建物といえば、銀座二丁目の「秩父錦」も忘れることができない。もっとも埼玉県秩父の酒を出す店で、郷土料理といっても蒟蒻と茸の料理くらいだが、建物の古さではこちらの方が上を行く。場所は、銀座二丁目といっても昭和通りを渡っ…

「樽平」

かつてよく通っていた店に、「山形の酒蔵」があった。銀座の松屋通りから細い路地に入ったところの地下にあり、階段を下りて店内に入ると、まるで山形の小さな街の古い居酒屋にワープしたかのような錯覚を覚える、すばらしい居酒屋だった。名前の通り、山形…

銀座「酒の穴」

二軒目に寄ったのは、ここ。松屋の正面にある、日本酒の店である。経営は牛肉料理の「らん月」で、一階から上が「らん月」、地下が「酒の穴」になっている。テーブルが七卓ほど、奥には座敷もあるが、やはり保冷庫の真ん前のカウンターに座りたい。ここは、…

丸の内「赤垣屋」

今日は、外資系労働組合協議会の定期大会で講演するため、熱海へ。一〇〇人ほど集まった組合役員たちを前に、格差拡大と日本の階級社会化、そして労働組合の果たすべき役割について、ひと通りお話をする。うっかりパワーポイントのファイルをVista対応の新し…

横須賀「坂戸屋」

今日は、三浦半島地区の労組や市民団体が主催する、日の丸・君が代問題に関する集会で講演を頼まれ、横須賀へ。「格差社会と若者たちの未来」というテーマで九〇分ほど話をした。いつもは教育の話といえば、教育機会の不平等のことくらいしか触れないのだが…