橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

豪徳寺「住吉」

帰りに少し飲んでいこうと、豪徳寺で下車。すぐ近くの世田谷線山下駅前の「住吉」に入り、ひとつだけ空いていたカウンター席に座り、ホッピーを注文すると、左隣の人から「橋本さん」と声をかけられる。なんと、「古典酒場」の座談会でお会いしたY-tabeさん…

御徒町「池田屋 御徒町本店」

土曜日だというのに朝から大学で会議を四つもこなし、解放されたのは五時すぎ。アクセサリーを買いに出かけていた妻と待ち合わせたのは、御徒町である。入ったのは、落ち着いた普通の居酒屋風といった趣のこの店。土曜日サービスで、いつもは五五〇円の生ビ…

「いこい」

こうなると、もう一軒行っておきたいのは、立ち飲みの「いこい」である。 もともと立ち飲み屋には、大別して二種類がある。ひとつは、酒販店が店頭で、缶詰や乾き物などの簡単なつまみとともに酒を売り、グラスといっしょに客に渡すもので、「角打ち」と呼ぶ…

「弥生」

OK横丁にあって、いちばん落ち着いた雰囲気の居酒屋が、ここ。中は、コの字型カウンターに一二席ほどがあるだけ。カウンターの前に溝が作ってあり、氷水の中でビール(大瓶五五〇円)が冷えている。銘柄は一通り揃っていて、客は自分で選んで栓を抜く。ビール…

OK横丁

赤羽駅東口には、東京近郊でも有数の規模のヤミ市があった。いまでも当時の雰囲気を色濃く残すのは、一番街の東側にあり、間口の狭い商店が密集する「一番街シルクロード」、そして線路よりの飲食店街「OK横丁」である。OK横丁にはもつ焼き・もつ料理の「八…

「トロ函」

「のんき」を出て、OK横丁から「まるます家」の横を通って一番街に入る。目に飛び込んできたのが「赤羽 トロ函」と大書された白い看板だ。以前、小岩の「トロ函」には行ったけれど、赤羽にも進出するとは驚き。しかも、「まるます家」の隣というベストポジシ…

「堀切のんき 赤羽店」

堀切菖蒲園に「のんき」という、もつ焼きの名店がある。実は私、まだ行ったことがないのだが、のれん分けした店が赤羽にできたという。二軒目はそこに行ってみることにする。まだ五時半頃なので、今日は私が最初の客。まずは、元祖下町ハイボール(二九〇円)…

「まるよし」

今日は、大学の雑用が早く終わったので、久しぶりに赤羽へ行く。板橋に住んでいた頃、赤羽はバス一本だったのでよく飲みにいったが、今では「よし、行くぞ」とちょっとした決意のいる場所になった。それでも年に一、二回行っているのは、それだけ好きな場所…

「ガラム・マサラ」

経堂西通りにある、インド料理の店。店主はインド人のハサンさんで、もともとは工学系の留学生として日本に来たらしい。料理についても研究熱心で、メニューは豊富。フラッシュムービーを多用したホームページも作っておられる。料理は何でも美味しい。十種…

祐天寺「ばん」

昭和三〇年代の話である。ある居酒屋で、なぜか炭酸が飛ぶように売れている。それを訝った炭酸会社の社長が、その店を訪れてみると、生レモンを焼酎に搾り入れ、炭酸で割って飲ませていた。そこからアイデアを得て、店の店主にもアドバイスをもらって開発さ…

立会川「いっぱちや」

今日は入試の最終日だったのだが、思いのほか早い時間に業務から解放された。まだ外は明るい。行ったことのない街へ行き、夕刻になってから居酒屋に入る。こんな楽しみができるシチュエーションである。懸案の未踏の地、旧東海道と京急線方面へ行ってみると…

江古田「和田屋」

今日は、出版社との打ち合わせ。大学の近くの、大きなテーブルのある居酒屋ということでこの店を選んだ。もともと、よく来ていた店なのだが、経堂に引っ越して帰りが反対方向になったので、ご無沙汰していた。メインのメニューは、もつ焼きと刺身で、いずれ…

「大越」

同じく神田のガード下、「升亀」の隣にあるのが、この「大越」。勝とも劣らぬ、素晴らしい大衆酒場である。ここも、広い。六人掛けから一二人掛けのテーブルが一五卓ばかりあり、一〇〇人以上は入れそうだ。「升亀」が典型的な大衆酒場とするなら、「大越」…

「升亀」

JRの神田駅周辺は、あまり行かない場所だ。新橋と並んでサラリーマンの集まる場所であり、居酒屋が多いことは分かっているのだが、ついでの用事というものがないので、なかなか足を運ぶことがない。新橋から神田にかけての山手線のガードは、戦前の赤煉瓦の…

「きはち」

経堂西通りの、焼きとんの店。小田急線沿線の世田谷で、焼きとんというと祖師谷の「たかはし」が有名。ここの店主は「たかはし」と関係があるらしいが、何かトラブルでもあったのか、店の関係者か常連客と思われる人物が、ネット上の掲示板で「たかはし」の…

阿佐ヶ谷「吟雅」

知人の近藤さんが、これまで勤めていたあなご料理店「はかりめ」を辞め、独立して開いたのが、この店。阿佐ヶ谷一番街の一番奥の方、飲食店の灯りが切れかけてきたあたりの、左側にある。カウンター七席だけの小さな店だが、カウンターは広く、椅子も大きめ…

阿佐ヶ谷「鳥正」

今日は、知人が新しく開いた店へ行くため、阿佐ヶ谷へ。といっても、料理は軽いつまみ程度になりそうなので、その前に一軒行っておこう。場所は、阿佐ヶ谷駅の南口を出て、左側へ信号を渡ったところから始まる細い通り。飲食店が連なる阿佐ヶ谷一番街である…

ニホンシトロンのレモン

ニホンシトロンといえば、ガス圧が強く、焼酎を多めにして酎ハイを作っても、炭酸の刺激がしっかり感じられるソーダで、下町の伝統ある大衆酒場の定番だが、これにレモン味のバージョンがあることを知る人は少ない。これを出してくれるのは、豪徳寺の「祭む…