橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2008-05-20から1日間の記事一覧

銀座「ささもと」

門前仲町の「大坂屋」のところでも紹介したが、明治中期の貧民街に関する優れた(といわれる)ルポルタージュに、松原岩五郎の『最暗黒の東京』(一八九三年)がある。ここに、当時のもつ煮込みについて「煮込──これは労働者の滋養食にして種は屠牛場の臓腑、肝…