橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「あさひや」「いちふく」

いまは昔、経堂に「あさひや」という居酒屋があったという。インパール作戦の生き残りという店主が、安く美味くをモットーに、焼酎は一六〇円、牡蠣の串焼きが一八〇円など、信じられないくらい安く、しかも美味しい料理を出して、地元の酔っぱらいたちに慕…

自由が丘「鳥へい」「金田」

自由が丘の東京書房へ、ネットで予約していた本を取りに行く。『東京路上細見』全五巻が五〇〇〇円。神保町あたりだと一冊一五〇〇円ほどで売っているから、割安である。そういえば去年、自由が丘へ来て「金田」へ行ったのも、東京書房の帰りだった。しかし…

大道珠貴『東京居酒屋探訪』

著者は、一九六六年生まれの芥川賞作家。この人の小説は、まだ読んだことがない。『本』という講談社のPR誌があって、昨年一〇月号に拙著『階級社会──現代日本の格差を問う』の紹介を書いたのだが、たまたま同じ号に著者がこの本の紹介を書いており、興味…

「吉乃川酒蔵」「三州屋」

今日は、ふと思い立って有楽町へ飲みに行くことにする。まず、以前から気になっていた丸三横町へ。二度往復しながら様子をうかがい、いちばん古そうな焼鳥屋に入る。七〇過ぎの女性と、その息子と思われる男性の二人で切り盛りする店だが、おそらく昭和二〇…

森下賢一『銀座HOW TOバーフライ』

一九九〇年刊のエッセイ。長年銀座でバーと酔客を観察してきた成果が凝縮した本で、とくに「方向音痴と豹変男」「もどり酒シンドローム」のところは抱腹絶倒。面白い読み物でありながら、バーでのたしなみやマナーについても書かれていて、参考になる。情報…

日暮里「豊田屋」

東大で研究会の後、地下鉄で千駄木まで行き、谷中ぎんざへ。久しぶりに来てみると、ちょっと洒落た感じで食器や民芸品などを売る、観光地のような店が増えた。酒屋も、店先にワインをたくさん並べている。商店街を通り抜け、日暮里へ向かう。坂の階段を上ろ…

川本三郎『我もまた渚を枕』

何冊目かになる『東京人』連載の単行本化。川本さん、今回は東京の近郊、船橋や銚子、岩槻などといった、ちょっと足を伸ばした場所を一泊二日でめぐり歩いている。文学と映画への造詣を背景に、私のような凡人ではとても発見できないだろうと思われる、古き…

高円寺「大将本店」

今日は、センター試験の一日目。早朝からの長時間労働で、これじゃビールでも飲んで帰らないとやってられないよ、というわけで大学からバスで高円寺へ。行ったのは、南口の真ん前にある「大将本店」。一階はカウンターが八席とテーブルが四卓。二階もあり、…

端田晶『小心者の大ジョッキ』

恵比寿ガーデンプレイスに、恵比寿麦酒記念館がある。玄関を入ると、横に広い半円形の階段を下りたところに、グランドピアノを備えたホールがある。予約すれば演奏することもでき、休日ともなれば、ミニコンサート気分を味わおうというピアノ愛好者たちが集…

「富士水産」「三福」

今日は、出版社との打ち合わせ(という名の飲み会?)で、池袋西口へ。まず入ったのは、池袋演芸場の角を入ったところにある「富士水産」。以前は、「居酒屋富士」という名前だったが、いつ頃からか魚介類を前面に出した形に改称し、店の外装もきれいになった…

江古田「ひもの屋網十」

今日は、三年ゼミの新年会。学生の割には渋い店を選んだものだ。江古田駅の南口を出てすぐの場所にあるこの店、だいぶ前に一度だけ入ったことがあるが、干物中心の店が学生街の江古田で受け入れられるかと、疑問に思っていた。しかし、ちゃんと続いているよ…

江古田「梅きち」

今日は、学部の新年会。会場は、大学の正門を出てそのまままっすぐ進み、踏切を渡ってすぐの「梅きち」である。この店は、ランチがとても充実していて、昼に行くことが多い。日替わり定食は、刺身、焼き物または煮物、サラダの三品に、具だくさんの味噌汁と…

「灯串坊」

夕食の後、どうしても串焼きが食べたくなって「灯串坊」へ。いつもの通り、カシラ塩と白タレを注文し、焼酎をロックで飲む。焼酎は、キープしてあった「山ねこ」。一杯分しか残っていなかったので、長崎で麦焼酎の味に目覚めた私は、「中々」をボトルでとる…

下北沢「魚真」

私の家と経堂駅をはさんだ反対側に、有名な魚屋「魚真」がある。一二時半の開店時には、飲食店関係者が大挙して押し寄せ、空になった発泡スチロールの函が、次々に山積みされていく。この時間帯に行っても、威勢の良いプロたちの間にはさまれておろおろする…

正月の思い出横町

思い出横町、別名しょんべん横町へ、買い物ついでに行ってきた。といっても、開いてる店は数えるほど。 この飲み屋街、嫌いではないが、あまり多くは行かない。雰囲気は好きなのだが、大衆的な見かけほどには安くないのが、第一の理由。ビール大瓶は六〇〇円…

謹賀新年

あけましておめでとうございます。ブログをちゃんと更新するようになってから約半年ですが、思いがけず多くの人に訪れていただきました。今年もできるだけ多くの居酒屋を訪れながら、日本の社会の行く末についていろいろと考えていきたいと思います。本年も…